医療者・トレーナーとの連携
現場での出演者のケアは、制作者等が応急処置や声掛けをして行われることが多いと思います。
しかし、体に負担の大きい演出がある場合やダンス公演は、怪我がおこる前からケアの専門家と連携することが、
ベストパフォーマンスを引き出し、公演の成功に役立てられるでしょう。
●治療やトレーニングの専門家と連携するメリット
- ① 怪我の予防
パフォーマンスのために、少々無理をすることもある芸術家。無理の積み重ねが怪我につながってしまうことは想像に難くありません。それをふまえつつ、負担がかかっている部位の痛みや緊張をとるだけでなく、負荷にたえうる体づくりや体の使い方など、芸術活動を続けるうえで役に立つ指導が行われます。
- ②パフォーマンスアップのためのトレーニング
普段の稽古のなかでは、弱点の強化はなかなか難しいものです。パフォーマンスの練習とは別のトレーニングで、結果的にパフォーマンスが向上する可能性があります。筋力トレーニングだけでなく、ピラティスやジャイロキネシスなどのコンディショニングは、中長期的に取り組むことで効果が得られます。
- ③応急処置対応による早期回復
現場では、突然の怪我が発生することもあります。トレーナーによる即座の対応と、医療機関との連携により、適切な手当が施されることが、早期回復に貢献します。忙しい現場で、傷病者にしっかり対応する人の存在は、スタッフ陣にとっても想像以上の助けとなるでしょう。
- ④医療機関との連携
連携できる医療者(機関)をもち、メディカルチェックなどを受けられると、客観的なデータによる怪我や病気のリスクなどが把握でき、対策をとることができます。団体のかかりつけができれば、時間外治療などの対応も協議できるでしょう。
●帯同を依頼するなら
- 1. 誰に?
医療者や施術者は、保有資格によって、治療できる範囲や施術内容が異なります。医師、理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師などが医療系の国家資格ですが、体作りの面などでは、各種トレーナーの指導も有効です。そのほか次の点がポイントになるでしょう。
なにが必要かによって、適任者をみつけましょう。
・急性の怪我への対応ができるか(ネットワークをもっているか)
・普段から芸術家の治療を担当していて、どんなパフォーマンスをするか知っている
・「本番」に帯同した経験がある(劇場環境や進行に理解があるか)
- 2. 期間は?
「本番のみ」サポートにつくことも可能ですが、「リハーサル期間から本番まで」と中期で帯同ができると、体の変化やパフォーマンスの影響などもとらえられ、一層効果的なケアが実現できるでしょう。
さらに、「オフ期間」も含めた長期スパンなら、次の作品に向けた身体づくりを行うことができ、弱点強化や長丁場の本番を乗り切れる体力の増進など、芸術活動全般に対して前向きな準備ができます。
- 3. 場所の確保(稽古場、劇場で)
個別のケアの場合は、施術ベッドが置けるスペースやパーテーションなどで目隠しがあるとよいですが、なくても対応できます。グループワークショップの場合は、稽古場の空き時間を活用できると、参加しやすく理想的です。